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岩村田簡易裁判所 昭和31年(ハ)21号 判決

原告

中島善寿

被告

林高志

外一名

主文

被告等は各自原告に対し金二萬九千円及びこれに対する昭和三十一年五月九日から支払ずみまで年五分の割合による金員の支払をせよ。

原告その餘の請求を棄却する。

訴訟費用は、これを四分し、その一を原告、その餘を被告等の負担とする。

事実

(省略)

理由

原告がその主張の日に被告林高志から原告主張の建物及び同建物備付の設備並びに本件電話加入権を原告主張のような約で買い受け原告主張の日にそれぞれその売買代金のうち金三十萬円を支払い、残金三十萬円を右被告方に持参提供したが、その受領を拒絶されたので、これを供託したことは、被告等が明らかに争わないから自白したものとみなすべきところ、被告等は右売買契約は解除されたというけれども、その解除の具体的原因については主張立証しないから、被告等の右主張は採用する余地がない。

しかして被告林高志が原告主張の日に被告林勝造に本件電話加入権の名義書換手続をしたことは当事者間に争がなく、被告林勝造が原告主張の日に更に沢井五郎に右電話加入権の名義書換手続をしたこと、右電話加入権の名義書換が原告主張のような被告等両名の共謀に基きなされたものであることは、被告等の明らかに争わないところである。よつて被告林高志は債務不履行による損害賠償として、被告林勝造は不法行為による損害賠償としてそれぞれ原告に対し被告林高志の原告に対する右電話加入権名義書換義務の履行を不能ならしめたことによる損害を賠償する義務があるものというべきところ、鑑定人篠沢市郎の鑑定の結果によれば本件電話加入権の右履行不能当時の時価は金二萬五千円であることが認められる。右認定に副わない証人小林士郎の証言は措信しがたく、他に右認定を覆すに足る証拠はない。しかしながら原告が他から電話加入権を買い受けその移転架設費として金四千円を要したことについては被告等は明らかに争わない。従つて原告は前記履行不能により右電話加入権の時価及び移転架設費の合計金二萬九千円相当の損害を蒙つたものというべく、被告等は各自原告に対し右損害金二萬九千円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日であること記録上明らかな昭和三十一年五月九日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払う義務があること明白である。

よつて原告の本訴請求は被告等に対し右支払を求める限度において正当であるから、これを認容し、その餘は失当であるから、これを棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九条第九十二条第九十三条第一項本文を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 輪湖公寛)

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